4月、新年度のスタート!
フレッシュな社会人を街や会社で見かける季節となりました。
企業では、新年度の組織変更に伴って転勤や部門間の人事異動が行われ、何かとバタバタしている方も多いのではないでしょうか。
そんな4月。
この時期の社会人と言えば……、そう、名刺!
新入社員であれ、ベテラン社員であれ、新しい部署名に新しい肩書きが刷り込まれた自分の名刺を持つと、ピリっと身が引き締まるというか、気合いが入るというか…、「よし、今年度もがんばるぞ!」と心に期するものが生まれてきます。
振り返ると、私も社会人になって初めて自分の名刺を手にした時は嬉しかったですね~。「俺も一人前になった!」なんて思ったりして……。
この3月から4月に掛けての時期。私ども紙屋からすると、他の時期に比べてとりわけ名刺用紙が出る(売れる)時期でもあります。当然、名刺の作成を行っている業者さんはてんてこ舞い。印刷機が回りっぱなしということもしばしばです。
さて、そんな業者さんにとってはチョー忙しい時期であるにもかかわらず、この度、迷惑を承知で「昨今の名刺の傾向」について突撃取材を敢行して参りました!
取材先は、様々な業種にわたって数多くの名刺を作成している、実績充分、横綱級の名刺製作会社さん。最先端で仕事をしている方ならではの興味深いお話も聞けましたので、今回はそれらを踏まえて、「名刺のアレコレ」について書いてみたいと思います。
(M社長、お忙しいことろ、すみませんでした! ご協力いただき、ありがとうございました!)
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日本の名刺
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海外で「名刺の紙」と言えば、アジア地域ではコート紙やマット紙にPP貼りしたもの。そしてヨーロッパでは、COC用紙や再生紙など、環境に配慮した用紙がおもに使用される傾向にあります。
日本はどうかと言うと、コート紙、マット紙に加え、ケント紙、キャスト紙、そしてファンシーペーパー(特殊紙)など、数多くの紙が使われ、非常にバラエティーに富んでいます。「和紙文化」や「紙への拘り」を持つ日本ならではの特徴と言えるかもしれません。
最近あまり見かけなくなりましたが、かつては、費用を掛け、自社のロゴを「型押し(浮き出し)」し、高級感のある特徴的な名刺を作る会社もありました。私も20数年前、お客様から、「型押し名刺」のご注文を数多くいただいておりました。
その時代の名刺は、「名刺でツケがきく」などと言ったほどで、それほどに1枚の名刺が企業やその人の存在を証明する、迫力のある価値あるものでもありました。(とは言っても、平社員ではツケききませんけどねぇ。笑)
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名刺の現状
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昨今の名刺は、シンプルなデザインと、カラフルで特徴的なデザインの2局化が進んでいて、圧倒的にカラーの両面刷りが多く、スミ文字一色の名刺は本当に少なくなっています。
大手企業ではデジタル印刷機の特徴を活かし、裏面のスペースを商品広告やキャンペーンの告知などに使ったりもしています。
また、葬祭用の名刺を別に作る企業もあります。(知ってました?)
例えば赤がコーポレートカラーの企業の場合は、葬祭用にロゴを黒やグレーに変えて作ったりするのです。
ここ数年で使用する紙にも変化が出てきています。
マット紙やケント紙の他に、アラベールやヴァンヌーボー、ルミネッセンスと言った、特殊紙を使用した名刺を作る方も増えています。
印刷の色使いも豊かになり、金や銀、クリアトナーを使って、個性的な名刺をご希望になるお客様も多くなっています。
特に夜の華やかなご商売の方々は、見た目の華やかさにこだわりをもって名刺を作る方が多く、ミラーコートやクリスパーコート、レーザーピーチ、スペシャリティーズ、ホログラムといったキラキラ、テカテカ感のある紙を使用することが多いという特徴もあります。
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名刺のサイズ
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一般的に使用されている名刺の大きさは、91mm×55mm(4号規格)で、これが標準サイズとされています。このサイズは、通常「4号」と呼びますが、メーカー(製作会社)によっては「9号」と呼ぶこともありますのでご注意ください。呼び方が違いますがサイズは同じ91mm×55mmです。
ちなみに、欧米では89mm×51mmが主流のサイズとなっています。
なぜ、日本で91mm×55mmサイズが標準サイズになったのかというと、諸説あるようですが、最も有力とされているのが、
「昔の「尺・寸」の単位の「寸」が名刺にも利用され、まず3寸(長辺91mm)が決まり、これに対して最も美しいとされる比率(黄金比率)から、(短辺55mm)が一般的に使われるようになった」という説のようです。
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「縦型と横型」、どちらがお好き?
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以前は、縦型の名刺も数多く見かけましたが、今や私の名刺フォルダーを見ると圧倒的に横型の名刺が多くなっています。
私のイメージでは、縦型はどちらかというと固い職業の方々や取締役など地位の高い方があえて使用しているように感じますが、どうでしょうか?
また、縦型はデザインによってスタイリッシュでおしゃれな雰囲気にもなるので、職種や業種によって好んで使う方(企業)も多いようです。
現在は、URLやメールアドレスなど、英文字を表記することが多くなっていることや、社名や部署名が長くなってきているので、それが横型の名刺が多く使われる要因の一つになっているように思います。
知人のデザイナーに、縦型、横型のどちらがデザインをしやすいかを訊いてみたところ、「特にどちらがデザインしやすいということはない」とのこと。(さすがですね!)
社名の長さやロゴの形、またISOやPマークといった各種マークの形や数によってバランスを取りながら、「縦型がいい」とか、「横型がいい」とか考えていくとのことでした。
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「名刺」で日本の景気状況がわかる?!
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名刺を製作している側から見ると、「名刺の発注の仕方」と「景気」には相関関係があることに気づかされます。
一般的に景気が良い時、企業はあまり組織変更や人事異動をしない傾向があるので、その結果「日々のリピート受注が増える」ことになります。例えば「毎日300人×各1箱」の注文が続くといった感じになります。
それに対して景気があまり良くない時は、年度の変わり目で積極的に人事を動かし組織を活性化(テコ入れ!)していくため、その結果「1度の注文で3000人☓各1箱」の注文が一括で来るという感じになります。
「ん~、なるほど!」ですよね。
さて、日本の景気もさることながら、あなたの会社はいかがですか?
名刺の発注の仕方で、案外とその会社の経営状態がわかったりして??
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名刺の今後
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かつては「名刺作り」は、専門の会社(印刷会社)に依頼して、1箱(100枚入り)数千円もの費用を掛けて作っていました。一般の方にはそう簡単には作ることができないものでした。
それが、今やデジタル技術が進歩することで、誰でも簡単に名刺が作れるようになってきています。デザインは勿論ですが、デジタル印刷(オンデマンド印刷だからこそ出来ること)の機能を最大限に活用し、また紙質にもこだわって、「一目でわかる」「特徴的」な名刺を作っていくことも必要な時代なのかもしれません。
写真、コーポレートカラー、各種マーク、金や銀、そしてクリアトナーの使用など、デジタル印刷機が様々な可能性を広げています。是非、あれこれと活用してみてください。
一方で、名刺は、会社名や住所、電話番号などの連絡先、所属部署、役職、個人名が記載されているもので、その扱い方によっては個人情報になり得るものです。個人情報保護が叫ばれる今、デジタル情報としての「漏洩」「流出」「滅失」のといったセキュリティー面でのリスクがあることも充分に理解をしておくことが大事です。
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名刺用紙の留意点
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名刺の紙については、ここ数年「厚めの紙」が好まれています。
やはり「しっかり感」は大事。
しっかり感を出すためには、名刺になったとき、紙の目が縦目になるように使うのが基本です。特に薄めの紙を使用する時は、横目になっているとさらに柔らかく感じてしまいます。
また、マット紙やファンシー系の用紙ですと、おしりのポケットに入れて強い圧力が加わったりすると、印刷面が裏写りしてしまうこともあるので注意してください。(特に夏の時期は要注意!)
プロダクションプリンターであれ、オフセット印刷機であれ、どちらもトナーやインクが紙の表面に乗っている状態ですので、強い圧力やこすれには脆弱な面があります。裏写りのリスクをより少なくするためには、塗工量の少ないケント系(マシュマロCOCやサンサンケントなど)の紙がお薦めです。
デジタル化が進む時代ではありますが、「手から手へ」という名刺の役割は、今後もビジネスシーンにおいて、初対面の方とのコミュニケーションツールとして必要不可欠なものだと私は考えています。
「名刺にこだわる!」
ビジネスの基本ですね。
「名刺」に関するご相談など、お気軽にお問い合わせ下さい。
関連記事:『知ってる? 名刺の厚さ』(2017/08/07)