石からできた紙【ストーンペーパー】

近頃、国内においてストーンペーパー(石から抽出した無機鉱物粉末から作られた紙)と同じコンセプトのシートが生産されているという話を、各メディアなどでよく見かけるようになりました。


弊社でも、”そのシート”がメディアに取り上げられるたびに、ストーンペーパーに関するお問い合わせの件数が増えており、「人のふんどしで…」ではないですが、ありがたいことだなぁ~と……。


と、感心している場合ではないですね。(笑)

ちゃんと情報発信しなくては!
ということで、今回は、ストーンペーパーについてお話します。

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ストーンペーパーって何?

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そもそも、ストーンペーパーとは何か? 
誕生のきっかけは、1990年頃の台湾の台南市で<ポリ袋製造 機械メーカー>を経営する台湾龍盟(タイワンロンミン)の梁(リャン)氏が、

「豊富で安価で白色度の高い資源である『石灰石』を主原料とする」ことで
 ①環境性が高い
 ②紙とポリの中間的性質を持つ
 ③従来の合成紙より安価
という「新素材」を創りたい

と発想したことでした。

しかし、開発をはじめたものの道のりは困難を極め、失敗の連続。
特に「石灰石の含有量を60%以上にし、可能な限り100%に近づけること」と「印刷用紙並みに薄くすること」が非常に困難だったそうです。会社を資金的な窮地に何度も何度も追い込んでしまい、一時は家族とも離散せざるを得ない状況にもなったそうです。
まさに、「人に歴史あり」、「ファミリーヒストリー」、「プロジェクトX」。(ちょっと古いか……) しかし、梁氏の不屈の精神と何人もの投資家たちによって、そんな窮地から抜け出すことができ、2003年になってようやく試作品が完成しました。
その後も改良に改良を重ね2006年。17年の歳月を費やして、ついに「ストーンペーパー」の生産体制が完成し、世に産声を上げました。

当初は台南市の工場で月1,000t規模の生産からスタートし、その後2013年に中国の遼寧省にて、現地の石炭関連企業との合弁会社「瀋煤龍盟(センメイロンミン)」を設立。台南市の約10倍の生産能力に相当する月産10,000t体制を築き、龍盟のメイン工場として稼働し始め、現在では台湾以外の全世界へストーンペーパーが供給される至っています。

  

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石からどうやってストーンペーパーを作るの?

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では、石からどうやってストーンペーパーを作るのでしょうか?

まず、炭酸カルシウムとHDPE(高密度ポリエチレン)でペレットを作り、それを溶かすことによって、ストーンペーパーの種を作ります。
その種からストーンペーパーに成型するまでの製造工程は、
 

  ①インフレーション(風船)成型
  ②Tダイ(押出し)成型


と2通りありますので、それぞれご説明します。

①のインフレーション成型は、ストーンペーパーの種を成型機から押し出し、下から空気を吹き込み、風船を膨らますようなイメージです。装置が安価で製品が柔らかく仕上がりますが、厚薄の差が出やすいという特徴があります。50~200μの比較的薄いシートのグレードで採用される成型方法です。

②のTダイ成型は、板をチューブから押し出すようなイメージです。装置は高価ですが、シートが硬く仕上がり、厚薄の差も出にくいという特長があります。250~700μの厚いシートのグレードで採用される成型方法です。

 

ストーンペーパーの特徴は、

  • 普通の紙に比べて、
  • 水に強く
  • 色あせ(酸化)がしにくく
  • 破れにくく
  • 質感が良い(これは好みにもよりますが・・・)
  • 紙と同程度の筆記適性がある

といった長所があります。

逆に短所とも取れる特徴は、

  • 高温に弱くレーザー及びトナー形式のコピー機は通せない
  • 貼り付け加工時は、接着剤を選ぶ必要がある
  • 比重が、パルプ紙より大きいので見た目より重たい
  • 厚みの製造誤差が出やすく、製品に厚薄のばらつきが見られる
  • 印刷加工の作業に技術を要する
  • 自然の石灰石の為、ロットによって色合いにバラツキがある

紙と比べると短所が多く感じられますが、あくまでも、紙とは似て非なる「新素材としてのストーンペーパー」として捉えて頂いて、特徴を生かした可能性を見つけ出すことがこの素材と向き合う正しい姿勢かなぁと思います。 

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「元祖ストーンペーパー」と「同じコンセプトの新シート」の違い

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話は戻りますが、国内において生産される「ストーンペーパーと同じコンセプトのシート」を比較した場合、(あくまでも主観的判断になってしまいますが)

  • ストーンペーパーはPE(ポリエチレン)を使用しているためマット調に、国内産シートはPP(ポリプロピレン)を使用しているためグロス調に仕上がる違いがあります。
  • 国内産シートは炭酸カルシウムの配合が少ないからか、ストーンペーパーと比べると「プラスチック」や「ゴム」のような感触がより強くあります(主観ですからお許しください・・・)。 
  • 国内産シートは厚物しかないことで使用用途がある程度限られてしまうかなぁと思います。例えば名刺など…。ちなみに、厚みのラインナップが揃っているストーンペーパーは、防災マップ、製袋、冊子、ブックカバーと様々な用途に使用されている実績があります。
  • 気になる国内産シートの価格は、国内の代表的な合成紙並みか、それ以上のようです。
  • コピーやインクジェットに不向きなのはストーンペーパーと同様です。

と、まぁ、元祖ストーンペーパーと国内産の同種シートでは、それぞれに特徴がありますが、いずれにせよ石を原料とするシートに注目が集まり、結果、ストーンペーパーが世間に広まることは我々にとっても望ましいことです。
今後の市場展開を見据えて、ストーンペーパーの新しい用途を探していきたいと思っています。

 

近頃では、ストーンペーパーに、消臭塗布剤「クリーンライフプロ」(珪藻土や沸石[ゼオライト]を活用)を塗布したシートが開発され、市場に出ていています。「クリーンライフプロ」の消臭効果と、ストーンペーパーの水に強く破れにくいという特長が相まって、ペット用シートや介護用シート、トイレやゴミ箱に活用されることが期待されています。(釜谷紙業株式会社で販売中)


次々と新しい取り組みがされていますので、そのあたりにつてはまた次回の記事でご報告させていただきます。乞うご期待!