皆さん、こんにちは。
先日、日本製紙株式会社北海道工場白老事業所を見学する機会がありましたので、今回はその工場見学のことと、併せて紙の製造工程についてご紹介したいと思います。
このサイトは、紙の卸商が運営しているサイトですので、たまには紙の直球ネタ”製紙”のお話も良いかと……。
東京も気がつけば紅葉の季節になりましたが、工場見学をした10月中旬の北の大地は既に里にも紅葉が降りてきていて、そろそろ秋も終わりかなという気候でした。
日本製紙株式会社様(以下日本製紙)は道内に勇払・白老・旭川・釧路の4工場を擁しており、平成22年4月より勇払・白老・旭川の3工場を北海道工場として統合し、勇払事業所・白老事業所・旭川事業所とそれぞれ改称されました。
今回訪問した白老事業所は、昭和34年6月大昭和製紙白老工場として創立。平成15年4月日本製紙と合併して日本製紙白老工場に改称し、平成22年4月からは日本製紙株式会社北海道工場白老事業所として、大型抄紙機3台と塗工機1台を保有し、印刷用紙の東日本の主力工場として今日に至っています。
北海道の工場らしく、敷地面積は89万8,000坪(東京ドーム53個分)という広大な敷地を有し、チップからパルプ(LBKP)を製造(日産1,000トン)し、そこから出た黒液を発電4ボイラーの燃料として再利用し、自家発電比率99%(昼間)と環境にも優しい工場となっています。工場内には、関係会社の方を含めると500名の方が働いているとのことです。
ちなみに、チップからパルプを製造するには歩留まりが50%ということですから、毎日2,000トンのチップを使っていることになります。その内の85%が輸入材で近くの室蘭港から、残りの15%は国内材で道内から搬入されていて、毎日約100台分の大型トラックが動いているそうです。
さてここからは、紙の製造工程について順に説明いたします。
■パルプ工程
紙の原料になるパルプは、木材チップ(木をチップ状に砕いたもの)から作られます。
①原料チップを蒸解釜(じょうかいがま)と呼ばれるお釜の中で薬品と一緒に蒸し、木材の中から繊維分(パルプ)と黒液(不要物:黒液はボイラーの燃料になります)を取り出します(この時点では繊維も木材色をしています。そのまま紙にすると茶封筒のような紙になります)。
②次に漂白をします。昔は塩素を使って漂白していましたが、公害問題などもあり、現在では酸素を使って漂白しています。ここで、やっと白いパルプになります。
■抄紙工程(しょうし:紙を抄くことを抄紙といいます。明治時代は製紙会社を抄紙会社とも呼んでいました)
紙を作る工程は、簡単に言うと水とパルプが混ざった原料を脱水・乾燥させていく工程です。
①ワイヤーパート(網で抄く工程)
パルプを水に溶かし(大量の水が必要になるので、製紙工場は川の近くに設置されています)ワイヤーでできた網の上に流していきます。ここで、ドロドロの原料からびちゃびちゃなシートになります。
白老事業所にある3台の抄紙機のうち、8号機は5,560mm幅、9号10号機は7,300mm幅もあります。
②プレスパート
びちゃびちゃのシートをローラーで挟み、圧力をかけて水を絞ります(戦後、三種の神器と呼ばれたころの洗濯機の脱水ローラーと同じ原理です。わからない方は昭和時代の博物館かネットで検索してね・・・)。ここで、濡れたシートになります。
③ドライパート
蒸気(黒液を燃やしたボイラーから供給されています)で熱したローラーの間に、濡れたシートを通し乾燥させます。やっと紙の原型ができました。
次に、インキや水が滲まないようにする薬品(サイズ剤)を塗布し、また乾燥させます。
④キャレンダーパート
紙の表面を均一にさせるため、つるつるな表面のローラー(キャレンダー)に通し、紙の表面を整えます。ここで紙になりました。
■ワインダー工程
7,300mmの原反(ジャンボロールとも呼びます)を指定の規格幅にカットします。
巻取り製品はこの工程で終了です。
■カッター工程
平判の製品は、ワインダー工程を経た巻取り製品から流れ方向にカットし、指定包装枚数で包装し終えたら、平版製品の完成です。
白老事業所の主要生産品目:
・白老町の名を冠した上質紙の「しらおい」
・A2グロスコートの「オーロラコート」
・A2ダルコートの「ユーライト」・「ユーライトDRYアルファ」
などとなります。
(平成30年5月以降「ユーライトDRYアルファ」は、白老事業所のみの生産になるということです)
日本製紙の主力印刷用紙を、9号10号機で生産しています。
この2つのマシンは建屋に並列で設置してあり、スペックもほぼ同等で2台合わせて日産約1,100トンの紙を抄ける能力があります。
壁をはさんだ9号機のすぐ隣には32号塗工機が設置してあり、9号マシンは32号塗工機用の原紙を生産しています。
この様に抄紙機と塗工機が別々に設置されている形態を「オフコーターマシン」と呼びます。(ちなみに抄紙機と塗工機が連続して1台のマシンとなっているものを「オンコーターマシン」と呼んでいます)。
オンコーターマシンの方がコート紙を作るには大変生産効率が良いマシンですが、抄紙パート、塗工パートのどちらかに不具合が出た場合や、白老事業所のように上質紙とコート紙を併抄している場合は、オフコーターマシンのメリットが発揮されます。
出来上がった製品は、苫小牧港から関東地方などの消費地へ出荷されます。
工場の近くに敷生川(しきうかわ)が流れており、取水堰を設けて取水しています。
この川は、鮭が遡上してくるそうですが川から鮭は捕ってはいけないそうです。
見学した日も遡上風景が見られました。(海で釣る分はOKだそうです)
周辺は豊かな自然に恵まれているため、古くはアイヌの人々の里もあったとのことです。
シラオイという地名もアイヌ語が語源だとのことです。
「しらおい」(上質紙)なんて、毎日のように取り扱っているわけですが、やっぱりそれが造られている工場を見て、その土地にふれると、取り扱う際にちょっと想いが入るというか…、刹那に風景がよぎるというか……。うん、工場を見学できてよかったです!
白老事業所で作られた製品も、勿論、弊社で取扱っています。是非ご用命ください。