ご存じですか?
鎌倉にある文具店兼代書屋のツバキ文具店を。
代書屋というと、運転免許試験所の近くで見かける行政書士事務所のことを思い浮かべる方も多いでしょうが、ツバキ文具店が行っている代書はそれとはちょっと違うのです。
持ち込まれる案件は、ラブレターだったり、絶縁状であったり……。それを本人に成り代わって、一から文面を考えて代書し、封筒、便箋、筆記具、書体、切手に至るまでこだわりをもって手紙を仕上げて投函する。
――家族、親友、恋人⋯⋯。伝えられなかった大切な人ヘの想い、
伝えておかなくてはならない大事なこと。
「あなたに代わって、お届けします」
2017年本屋大賞の第四位に選ばれた小説『ツバキ文具店』(小川糸 著/幻冬舎)で描かれているのが、この代書屋なのです。
主人公は、祖母(先代の店主)が亡くなった後に店を継いだ20代の独身女性「雨宮鳩子」。幼少の頃から、代書屋の跡継ぎとして祖母から厳しく仕込まれてきたのですが、それに反発して家を飛び出してしまい、この度、祖母の訃報を受けて8年ぶりに家に戻ってきたのです。本来は店を畳むつもりで家に戻ったのですが、本人の思いとは別の次元で物事は動いていき、結局、文具店を継ぐことになり、しかも代書屋までも……。
心の底がポッと温かくなるハートフルな物語が展開していきます。
4月14日からはNHK総合でドラマもスタートし、主演の多部未華子さんが好演しています。
(NHKの公式HPはコチラ⇒ http://www.nhk.or.jp/drama10/tsubaki/)
この本を読むと、もしくはドラマを見ると、ペンを持って手紙を書きたくなるんですよね~、これが。
特にドラマでは、手紙を仕上げていく過程―ペンを選び、紙を選び、依頼人らしさがにじむように書体・筆跡を整え、文体を仕上げていく様子―がシーンとして描かれているので、見ていると、より一層私たちの”書き心”を刺激してくれます。
例えば第三話『けじめの断り状』では、こんなシーンが描かれています。
主人公/鳩子のモノローグが映像と共に流れます。
「男爵(依頼人/高齢者)の雰囲気には毛筆よりも太めの万年筆が合っている。インクは漆黒。紙は便箋ではなく原稿用紙を使う」
鳩子は心を整えて、男爵になったつもりで原稿用紙に万年筆を走らせる。
<ナレーション:友人からの借金の申し入れを断る内容の文面が読み上げられる>
書き終えてほっと息をつく鳩子。「男爵の心意気を示すために脇付をあえて付け加えた。『呵々』というのは、あはは…と口を開けて大声で笑う様子を表している」
そして封筒に切手を貼る。鳩子のモノローグが流れる。「金剛力士像の切手は500円。これでは払いすぎだけど、絶対にお金は貸せない…という男爵の強い意志を示すにはこれくらいのことはしていだろう」
どうです?
このこだわり。
原稿用紙に、太い万年筆で、漆黒の文字が刻まれていきます。
切手を貼ると、切手の中の金剛力士像がこちらを睨んでいる。
う~ん、手紙の世界も奥が深いですね~。
何だかステキですよね。
先日2月3日の「文の日」の記事の中でこんなことを書きました。
”想い”は文字だけで伝えるものではなく、紙にもペンにも乗るものです。
受け取った方は、”ふみ”を通してあなたの”想い”を感じるのです。
『ツバキ文具店』を見ていて、改めてその認識を強くしました。
――そうだ、手紙書こう
紙のご相談はシオザワまで。